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林家ぼたんのブログ

~落語と講演 Peony~

つくしお姉さん礼賛

カテゴリ / ぼたんのつぶやき
2019.05.15

「落語ガールズ」という女性落語家が所属団体という垣根を越えて切磋琢磨する会に定期的に出演しております。同じ団体に所属していても、出演順が近いか、一門が同じでないと先輩後輩の高座を聴く機会がありません。ですから先輩であるつくしお姉さんの高座は毎回、多くのことを学ばせてもらっています。目から鱗の落ちるような、また自分を省みるような、そんな気持ちです。お姉さんは継続して新作落語を発表されてらっしゃり、同業者として、本当に尊敬いたします。落語を作るということ、さらにそれを続けるということは、本当に凄いことです。お客様や同業者先輩後輩の中には新作落語を古典落語より下にみている方も見受けられますが、全くそんなことはなく、真のクリエイター、元来の落語家の姿ではないかと思います。つくしお姉さんに対するヨイショみたいになってきましたが、私の率直な気持ちです。

さて、昨晩のお姉さんの「文豪たちのホームルーム」ですが、終演後演目を掲示する都合上「ネタはなんとお書きしますか?」という質問に「まだ決まってない」とのこと。なんと!高座直前に作られたそうです。内容からオチから、かなり練られていうように思えたので、本当に驚きました。ネタの内容は実際にご覧いただくのが一番かと思いますが、日本の文豪が一つのクラスにいて、それぞれの作品や特徴にちなんだ会話が展開していきます。その中で田山花袋とその代表作がくすぐり(笑い所)に出てくるのですが、恥ずかしながら昨晩までその存在を知らず、終演後ネットで検索してしまいました。お姉さんの「ロック根問」を拝聴した時もそうですが、お姉さんの高座は観た後に、何か調べたり、読んだり、深堀りしたくなります(田山花袋の「蒲団」、早速図書館で借りようと思います)お姉さんは物知りな方ですが、それを鼻にかけることが全くなく(いやむしろ無さすぎてもう少し鼻にかけて欲しいくらい!)嫌味がないです。例えば、Wikipediaで一生懸命調べて作ったのではなく、元々身体に入っているものが発露している所にますます感動しました(作品中、三島由紀夫のくだりは最高でした)

お客様が文芸に興味がなく言っている意味が通じない可能性も考えられますから、ハイリスクハイリターンかもしれません。しかしながら「ひょっとして分からないのでは?」と考えるのはお客様を見縊ることのなります。もちろん「文豪たちのホームルーム」は、文芸に詳しくなくても、十分楽しめる作品(詳しければ十二分に楽しめるはずです)です。昨今、あらゆることが幼稚に傾いている気がしています。Twitterは140文字、Instagramは写真の力で表現することが流行している所を見ると、長い文章を読む力も世界規模で落ちてきているのでは?と思います。笑いに関しても例外でなく、滑った転んだトムとジェリーのような笑いの形(もちろんそれも素晴らしいです)、一瞬で笑える、見て笑える、考える必要性のない笑いが流行り、それがずっと続いている気がします。そんんな中で昨晩のつくしお姉さんの高座のような笑いの形を学ぶことができて、幸運でした。

私は学生時代、新作落語をやっていたのですが、落語を知れば知るほど作れなくなってしまいました。今は落語というものを大切にしながら自分の考えや経験をマクラや噺の登場人物に反映できたらいいなと思っています。

引き続き、落語ガールズの応援をよろしくお願いいたします。